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2024.08.21メディア

『月刊三方よし経営』九月号の巻頭言に当社岩井の文章が掲載されました。
三方よし経営 表紙
三方よし経営 巻頭言

 岩井の文章の全文を掲載させていただきます。


『月刊三方よし経営』令和六年九月号「巻頭言」


(タイトル)アドラー心理学からの三方よしへの提言


 有限会社ヒューマン・ギルド代表取締役

 アドラー心理学カウンセリング指導者

 岩井俊憲


(本文)

 100年も前に活躍したアルフレッド・アドラーの教えがなぜ、今の日本で人々を魅了しているのだろうか? その点を「共感」「共同体感覚」をもとにひもとこう。この二つは、「三方よし」と密接な関わりがあるからだ。

 まず、「共感」に関連して、アドラーがこんな言葉を残していることにご注目いただきたい。「一般に、仕事で成功するかどうかは、社会適応のいかんにかかっているということができる。隣人や顧客の要求を理解し、彼〔女〕らの目で見て、彼〔女〕らの耳で聞き、彼〔女〕らが感じるように感じることは、仕事において大変有利なことである」(『個人心理学講義』/アルテ)。

 100年近く前に「顧客満足」にも通じる「彼〔女〕らの目で見て、彼〔女〕らの耳で聞き、彼〔女〕らが感じるように感じる」共感を提唱していたことは、刮目に値する。   

 次に、「共同体の中での所属感・共感・信頼感・貢献感」であり、「精神的な健康(Well-being)のバロメーター」を意味する「共同体感覚」については、次の二つのことでその重要性が理解できるであろう。

 第一に、令和五(二〇二三)年の内閣府による調査で、一五歳から六四歳の生産年齢人口において推計一四六万人が引きこもり状態であることが発表されたことは、大きな衝撃を与えた。同年齢層の人口の五〇人に一人が引きこもっていることに相当し、この人たちの心理的な居場所が確保されず、勇気をくじかれた状態にあることが明らかであるからだ。

 第二に、「家族だけではなく、一族、国家、全人類にまで(中略)さらには、この限界を超え、動物、植物や無生物まで、ついには、宇宙にまで広がる」(『人間知の心理学』/アルテ)とアドラーが書いている「共同体感覚」は、時空間を超えた共同体(社会、環境、次世代まで)にとって建設的な営みを意味する。

 ところが、この六月にメディアを騒がせた大手自動車メーカーのトヨタ自動車やホンダ、マツダ、スズキなど五社で発覚した認証試験をめぐる不正は、前代未聞の不祥事といわれ、国内外で衝撃が広がった。これは、より広い共同体に対する非建設的、見方によっては破壊的な出来事ともいえる。「生産性(スキル)」ばかり追求し、「人間性(マインド)」を置き去りにした営みに見えて仕方がない。共同体に対する破壊的な行為の極みは、環境破壊で顕著であり、「SDGs」とも深いつながりがある。

 今年一月、私は一〇〇年前のアドラーの教えを現代に再現すべく『超訳 アドラーの言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を世に出した。この本では、難解なアドラーの文章を現代が抱える諸問題の解決のヒントを提供すべく、読みやすく超訳し、一部のアドラー心理学の本で流布している誤解を解く使命をかなえることができた。より多くの読者に届き、アドラーの教えが「三方よし」の経営理念とぴったり当てはまることをご確認いただければ幸いである。


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