2025.03.21メディアNew


実践倫理宏正会の機関誌『倫風』(3月号)に当社岩井の【劣等感】の記事が掲載されました。
内容をご紹介いたします。
実践倫理宏正会の機関誌『倫風』(3月号)
劣等感を、成長を促すエネルギーに変えていく
コンプレックスはアドラー心理学で多くの場合「劣等感」と同様の意味で使われます。
劣等感の捉とらえ方によって、自己の成長や幸せ感はどのように変化するのか。
アドラー心理学が専門の岩井俊憲さんに、劣等感との向き合い方について伺うかがいました。
劣等感は誰しもが持つ、あって当たり前のもの
アドラー心理学において劣等感な主要なテーマの一つで、大きく2種類にわけて考えます。一つは対他的劣等感で、他者と比較した時に生まれるもの、例えばきょうだいに比べて自分は劣っているという感覚です。
もう一つは対自的劣等感です。
子どもが思春期になってくると、いい高校に行きたいとかスポーツでがんばりたいといった目標が出てきますが、それと現在の自分との間にあるギャップで感じるものです。
これらの劣等感を、アドラー心理学では悪いものとして捉えていません。人間なら誰もが持つもので、劣等感があるからこそ「努力しよう」と思うことができると、肯定的に考えているのです。
しかし、それが悪い方向にはたらくことがあります。劣等感が強くなりすぎると、直面している人生の課題から逃げる目的で使われてしまうことがあるのです。例えば「貧しい家に生まれたからしょうがない」というふうに、ほかの要因に責任転嫁したり、他者の足を引っ張ろうとしたりすることです。このような異常に強い劣等感ををアドラー心理学では「劣等コンプレックス」と呼んでいます。
劣等コンプレックスに陥ちいらないためには
劣等感を自分の成長に繋つなげるには、いくつかの方法があります。
一つは、目標を現実的なものにして折り合いをつけること。私がカウンセリングした方の中に、医学部の受験に6年間を費やした人がいました。最終的にその方は医療の道を諦めきれず、看護学校に通うことにしました。医師でなくとも別の道があると切り替えたわけです。
もう一つは、現実の方を高めること。昔、学業を疎かにしていた知り合いは、会社を経営しながらも、いわゆる「学歴コンプレックス」に悩んでいました。しかし社長業の合間をぬって通信制大学で学び、大学卒の資格を得ました。理想と現実のギャップを埋めるには理想を下げるか、現実を高めるか、どちらかを選ぶようにするのです。
劣等感には、容姿など遺伝的なものや家柄など、本人の努力では変えられない要素もあります。こうした要素に対して、劣等感を言い訳にして課題から逃げたり、他者の足を引っ張るなどすれば劣等コンプレックスになります。これを「非建設的対応」と言います。
一方で、劣等感がある要素とは違う土俵で勝負するのが「建設的対応」です。私の知り合いの臨床心理士は顔にやけどの跡があるのですが、そこに目が向くのは初対面の一瞬だけで、あとは何も気になりません。非常に熱心に勉強を重ねてカウンセラー・セラピストとして活躍しています。自分の努力では変えられないものがあったとしても、対応の仕方は自分で決めることができます。容姿など遺伝的要素にこだわっているのは他者ではなく、自分自身だということです。
本当は違う分野で努力をすれば現実を変えられるはずなのに、それができない理由を容姿など遺伝的要素に求めてしまうと、劣等コンプレックスになってしまいます。劣等感から生まれるエネルギーを正しい方向に向けることが大切です。
子どもの劣等感に親ができること
親は子どもが生まれた時は無事に生まれたことだけでうれしかったのに、そのうち高望みをする
ようになるものです。まずは原点に立ち返って、子どもをリスペクトすることが大切です。リスペクトとは、人それぞれにさまざまな違いがあったとしても人間の尊厳に関しては違いがないことを受け入れ、礼節をもって接する態度です。
そして子どもを無条件に信頼し、それを態度で示すことです。一つの基準として、「友人に言ったら絶交されそうなこと」は絶対に子どもに言わないことです。また成長するにつれて親にとって未知の領域、子どもが秘密にしたい領域が増えていきますが、それを詮索しないことが、信頼を態度で示すことになります。決意と覚悟と忍耐が必要ですが、それを備えるのが親の役目です。
子どもが劣等感を持って苦しんでいると感じた時、親はどんなことができるでしょうか。まずは、子どもに話したいことがあると伝え、いま話せる状態かどうか、了解を取る必要があります。一方的に「こうしなさい」と指導するのではなく、対等のコミュニケーションをとる姿勢を伝えるのです。
そのうえで「最近のこんなところが気になるんだけど」と話してみてほしいのです。そして子どもから求められれば、自分の経験や知識を元に助言することもあっていいと思います。
私は子どもとの向き合い方として、五つの要素を挙げています。そうして、親のリスペクトを得られている自信をエネルギーにして、子どもは劣等感を建設的に捉えて自分なりに努力し、成長していけるはずです。
◆岩井のブログもご参照ください。
アドラー心理学による勇気づけ一筋40年 「勇気の伝道師」 ヒューマン・ギルド岩井俊憲の公式ブログ (goo.ne.jp)